第145回夜学会「日本のゴーギャン 土方久功」

はりまや橋夜学会を再開します。第145回。

テーマ:日本のゴーギャン 土方久功

日時:9月6日(金)午後7時から

場所:はりまや橋商店街Water Base

講師:伴武澄


土方久功(ひじかた・ひさかつ=1900 - 1977年)昭和の初期から戦争が始まるまで南洋諸島のパラオに渡り、現地人と交わりながら、彼らの生活を記録し、「パラオの親和伝説」を著した。彫刻家、画家、詩人、そして民俗学者でもあり、日本のゴーギャンと呼ばれた。  土方の功績は、文字を持たず口伝として伝わっていたパラオの神話を体系化し、世に残したことだった。パラオの神話はまずアルファベットで表記され、日本語で書かれた。

 土佐出身の軍人の父の元で育ち、学習院から東京芸大彫刻科に進み、青年時代は従兄の影響で演劇に染まった。肺病に悩んだことから養生をかねてパラオに渡り、新しいインスピレーションを見出すこととなった。

 土方がパラオに渡ったのは1929年。1941年までパラオやヤップのサヌワテ島などで暮らした。島民とほとんど変わらない裸、そして素足の生活をはじめた。やがて土方はパラオの人々の言葉を学び、人々の生き方に共感するようになった。島中を歩き回り、遺跡や遺物を調べ上げ、部落の組織や酋長制度の在り方まで調査した。 パラオの村にはアバイという館があり、青年に達した男児が共同生活を営んでいた。アバイには絵文字が描かれていて、土方はその絵文字の解読からパラオ文化の解明を始めた。村の古老から彼らの神話の聞き取りを始めた。

 土方の手法が面白いのは日本書紀の記述にならったことである。いくつかある神話の口伝の確かと思える事象を記述し、他の伝承も列記している。大海に孤立して暮らしてきたと思える太平洋の人々に考えられないほど広範囲で文化の共通性があることが神話の中から見出すことができる。

 日本書紀との関連でいえば、火の神様を生んで死んだイザナミの存在に近い、創世記の神ウワプがいる。ウワブは成長に伴ってどんどん大きくなり家の中にも居られないようになった。あまりに大きくなってじゃまとなったため、下から火を焚いて殺された。ウワブは倒れてパラオ島となったのだそうだ。

 ミクロネシアを含め、南洋諸島のほとんどの地域は女系社会だった。日本もまた神話時代は女系社会だった。日本の文化は稲作を含めて大陸から伝わったことになっているが、土方が言いたかったことは太平洋の島々からの影響だったに違いない。フンドシという存在はもちろん大陸にはない。太平洋の島々の文化そのものである。

 土方は帰国して一時期ボルネオに渡ったが、戦後は彫刻や詩作の生活を続けた。日本という小さな国家の枠にはまらないスケールの大きな一生を送ったため、存在そのものが忘れ去られている。

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