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英財務相が「新規PFIを行わない」宣言

 2018年10月29日、イギリスのハモンド財務相は「官民パートナーシップを廃止する。金銭的にメリットが乏しく、柔軟性がなく、過度に複雑」として、「今後新規のPFI事業は行わない」と宣言した。サ40年前、サッチャー政権に始まった公共サービスの民営化は、終焉の時を迎えたといっていい。そんな海外のトレンドにも学ばず、PFIに突き進むのが現在の安倍政権。特に水の民営化で各地で不安の声が上がっている。 本家本元のイギリスでPFIへの反省の機運が盛り上がったのは、2018年1月、イギリスの会計検査院が発表した「PFIの対費用効果と正当性」というレポートがきっかけ。 まず、自治体と民間企業との契約期間が20年程度と長いことを問題視している。契約期間が長いことで競争原理が働かず、サービスの質が低下する上、変化に対して柔軟に対応できなくなっていると批判している。 第2に、一つの業者への包括的業務委託となるため、業務プロセスが不透明で、価格上昇やサービス低下が起きても原因が分かりにくくなると分析。また、業務の委託先がコンソーシアムを組む場合が多く、責任の所在とお金の流れが不明確になるとしている。 第3に、自治体と民間とのリスク分担について、民間がリスクを負担できなくなると、サービスの途絶や質の低下が起きやすいと指摘している。 こうしたことから、会計検査院は「多くのPFIプロジェクトは、通常の公共入札より40%割高」となっており、「公的財政に恩恵をもたらしたかどうかデータで示されない」とまとめている。 サッチャー政権の民営化路線は、まず石油、航空、電話、ガスなど公営企業の民間への株式売却から始まり、その延長上でPFI手法が開発され、先進国に広がり、途上国では債務問題を救済する条件として公的サービスの民営化が国際機関から強要されたという歴史を持つ。 民営化は、先進国では自国政府の効率化から始まり、それなりの財政的改善が見られたことは確かである。民間の方も新たな収益確保先として公的サービスに乗り出すメリットもあった。しかし、民間といえども、長期にわたる独占的な公的サービスとなれば、当然ながら弊害が出てきてもおかしくない。 どれくらいの期間なら効率的経営が続けられるかは分からないが、20年以上は長すぎる。しかし、5年なら民間は参入してこないかもしれない。そんなことなら膨大なエネルギーを費やしてPFIを推し進める必要はないかもしれない。 日本の官僚はそれなりに優秀だが、一度決めたことから後戻りする勇気と知恵を持たないことが致命的欠陥といえる。イギリスが公から民への長い経験に「No」を言い出した勇気に学ばなければならない。

水道民営の本家はフランス

下水道民営化に突き進む須崎市

 灯台下暗しとはこのことだ。高知県須崎市では、コンセッション方式による下水道事業の民営化に突き進んでいることがわかった。月内に優先交渉者が決まる。応札できる条件は①過去5年間に公共下水道の全体計画、事業策定業務の実績を有する②県内に営業所または支店を有する-ものに限定されている。
 基本的に公営である日本で、「公共下水道全体」を業務として行う民間企業はいるはずもない。ウオー。ヴェオリアの出番かもしれない。須崎市は日本カワウソがかつて棲息していた地。しんじょう君が泣く。 昨年12月18日付の高知新聞記事によれば、 「高知県須崎市の下水道民活が審査へ」 「1月末に優先交渉者決定」  公共施設の運営権を一定期間、民間に売却する「コンセッション方式」による下水道運営を計画している高知県須崎市は17日、事業者の提案書受け付けを締め切り、審査に入った。公募型プロポーザル方式で、市の審査委員会が審査する。市は「公平性を期するため」として、事業者名や数を来年1月末の優先交渉権者選定まで非公表とした。

 契約は20年と非常に長い。

 2018年2月に実施方針を公表し、8月の説明会には県内外の12社が参加した。提案書は運営の考え方や収支計画、事業実施の適正さを確認するモニタリング計画などからなる。市の審査委員会(委員長=藤原拓・高知大学農林海洋科学部教授、6人)が事業者名を伏せたまま書類などを審査する。

 記事では「書類審査に加えて来年1月9日に事業者から提案説明を受け、同30、31日に優先交渉権者を決定。順調に交渉が進めば契約は5月ごろ、下水道の運営開始は10月を予定している」という。

 参考までに須崎市のの募集要項には対象施設として 下水道管渠(約10キロ)
終末処理場(潮田町) 大間ポンプ場(潮田町)
須崎ポンプ場(港町) 須崎西ポンプ場(栄町) 処理場内ポンプ場(潮田町) 浜町ポンプ場(浜町1丁目)
下水道管渠(雨水)12キロなどが含まれている。

イタリアの国民投票では95%が反対

ギリシャの水を狙うフランス

 欧州債務危機の震源地だったギリシャでは、「トロイカ」による財政再建プログラムが相次いで要求され、大規模な民営化要求の中にアテネとテッサロニキの水道公社が入っていた。

 テッサロニキの水道事業は、50万人の住民に対して順調な経営を続けていた。フランスのスエズが5%出資しているが、ある日、スエズの人が設備などを調べに来た。「ここの水はこんなに安いのか」と感想をもらしたそうだ。

 2013年2月、フランスのオランド大統領がやってきて「民営化はギリシャの人々の選択で、欧州が推奨したことでもある。フランス企業はいかなるセクターにも出資する用意がある」とギリシャへの投資拡大に意欲を示した。フランスはパリなど約90の自治体が水道事業の再民営化がなされたばかりだった。自らの失敗の損失を南の国で取り戻そうとしたのである。  危機感を持った市民は、ベルリンの住民投票やイタリアの国民投票を見習って、水道民営化の是非と問う住民投票を計画した。  これに対して閣僚の一人が、「学校に投票箱を置いてはならない。住民投票は違法である」など圧力をかける書簡を送ったのだ。  それでも住民投票は2014年5月に行われ、98%の投票者が「non」を突き付けたのだった。2015年にギリシャでは左派政権が誕生するが、トロイカからの圧力は減じていない。

 2017年9月、マクロン大統領がギリシャを訪問し、ギリシャの民営化プログラムに関心を示す40人もの企業家を引き連れていた。その中にスエズのCEOの顔もあった。ギリシャの左派政権は、トロイカの圧力と国民の民営化反対の声の板挟みで苦悩が続いている。
(「最後の一滴まで」から、文責:伴武澄)

37自治体水道の統合を要求されたアイルランド

  トロイカによって、民営化が強いられたもう一つの国はアイルランドだ。37の自治体にあった水道事業は一つに統合するよう指示され、政府は「アイルランド・ウォーター・カンパニー」を設立した。同社は住民の家の敷地外に水道メーターを設置し始めた。

 ヨーロッパの人々は、欧州連合(EU)と欧州中央銀行(ECB)、国際通貨基金(IMF)をトロイカと呼んでいる。

 コーク市で一人の若い女性が、路上でメーター設置に抵抗したことをきっかけに、同社への反対運動が広がった。

 2014年11月にはダブリンで13万人(総人口の4%)が新しい水道料金制への反対デモに参加した。アイルランドには水道メーターはなく、水道供給は一般財源で行われていたのです。その結果、アイルランドはOECD諸国の中で唯一、水の貧困のない国であることを誇っていたのだった。

 そもそも、水道民営化は債務返済軽減の代償として突き付けられたものだった。しかし、73%の国民が新たな水道料金システムでの支払いを拒否し、水道企業の運営は失敗した。

 しかし、政府は水道の民営化を断念したわけではなく、メーター設置に反対する国民の運動は続いている。(「最後の一滴から」、文責:伴武澄)

アイルランド・ウォーター会社
https://en.wikipedia.org/wiki/Irish_Water

水を取り戻したパリ市

  パリ市の水道サービスは1985年から民間企業であるヴェオリア社とスエズ社によって担われてきた。前副市長のアンヌ・ル・ストラ氏は「長年の経験の結果、私たちはサービスの管理能力を失ってきたことにきづいたのです。財政的な透明性も欠如していました。だから私たちは水道サービスの管理権を取り戻す決断をしたのです」と語る。ストラ氏は2月に来日時に「水道料金は1985年から2008年までに174%上がりました。施設更新など必要な投資ならよいですが、情報公開が不十分で公営化後の調査では、7%と報告されていた営業利益は、実際には15-20%であり差額がどのように使われたかがわかっていない」と語っていた。ヴェオリア社員のJ.トゥリは、同社のやり方を公に告発し、追われたものの潔白が証明され再雇用された。彼はヴェオリアのデータ改ざんや、不正な資金の流れを告発したのだった。
 こうした問題から、パリ市の水道は2010年に再公営化し、オードパリ社という公営企業が担うようになった。同社は100%公営で、市が管理し、株主は存在せず、独自の予算を持った半独立の法人だ。オードパリは公営企業として5つの流域、12の県、300自治体とパートナーシップを結んでいる。地下水マネジメントや水源の保全、さらには生物多様性、持続可能な農業、地域連携、持続可能な地域開発、環境型社会、地産地消など、長期的な水保全と水質改善に取り組んでいる。地域連携、地方自治体、農業セクター、NGOとの連携も進んでいて、国際的にも高い評価を得ている。(ドキュメンタリー映画「最後の一滴まで」から。文責:伴武澄)

高知市庁舎に入居しているフランス企業

 高知市上下水道局のお客様センターは、2011年1月からフランスの水大手、ヴェオリア社日本法人の子会社ヴェオリア・ジェネッツ社に業務委託されている。 9年目に入るが、ほとんどの高知市民はこのことを知らない。ヴェオリアは2002年に日本法人を設立し、相次いで水関連の日本企業が買収した。その中に各地で水道料金徴収業務を請け負っていたジェネッツ社もあった。いつの間にかジェネッツ社がフランス企業の傘下に入っていたのだから、分からなくて当然だ。 ジェネッツ社が社名にヴェオリアを冠したのは2015年。いまでは174カ所で水道料金徴収業務を行っている。ほとんどの都市にヴェオリアが浸透していることになる。日本法人の社員は3000人弱だから、すでに大企業である。料金徴収以外にも、広島県広島市下水道局(2006年)、 埼玉県下水道公社の下水処理場(2006年)、松山市公営企業局の浄水場(2012年)、浜松市公共下水道終末処理場(西遠処理区)(2018年)の運営を任されている。 高知市で奇怪なのは、ヴェオリア・ジェネッツ高知営業所の住所が、高知市上下水道局と同じなことである。民間企業が市役所の庁舎に営業所を置いているのだ。営業所だから、会計事務や採用などの要員も市役所の中で業務をこなしている。こんなことは高知市以外ではまず許されないだろう。 上下水道局は賃貸料を取っているというものの、年間180万円(光熱費込み)というから、高知市内でもかなり安い部類に入る。安いどころではない。概算で光熱費が月額10万円とすると、50人ほどの事務スペースの賃貸料は月5万円ということになる。これは法外といっていい。しかもこのことは高知市上下水道局とヴェオリア・ジェネッツ社との契約書に盛り込まれている。 お客様センター業務の外部委託は市役所の業務効率化の議論の中から生まれ、プロポーザル方式によって、3社が入札し、5年間11億円の金額でジェネッツ社(当時)が落札した。この金額の妥当性は素人には分からないが、年間9000万円の経費削減になると説明された。2014年に高知市の上水道と下水道が統合され、2016年からは13億1000万円で契約が更新された。 今のところ、高知市は水道の民営化はしない考え。昨年12月の市議会で、上下水道事業管理者が明言しているから間違いない。ヴェオリア社から、料金徴収業務以外のプロポーザルもないという。「高知みたいな小さい都市に来るはずがない」との説明もしている。水の民営化が議論される中で行われた12月議会でのやりとりは一切、報道されていない。僕が現役記者だったら、「高知市、民営化にノー」と書いただろう。